『ゴースト・イン・ザ・シェル』プロデューサーに聞く、日本のIPがハリウッドで映画化される意義

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ゴースト・イン・ザ・シェル

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近未来。悲惨な事故から命を助けられ、完璧な戦士として対テロ捜査のエリート組織・公安9課に所属していた「脳以外は全身義体」の少佐。だが、あるサイバーテロ組織と対峙し、捜査を進めるうちに、自分の記憶が操作されていたことに気付く。本当の自分は誰なのか、答えを求めて奔走する少佐に、彼女の存在を揺るがす衝撃の事実が明かされ…。

全世界のカルチャーシーンに大きな影響を与えた、日本が世界に誇るSF作品の金字塔「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」。 主人公・少佐役にスカーレット・ヨハンソン、公安9課を率いる荒巻役にビートたけしが出演するほか、国際色豊かな豪華キャストが集結。士郎正宗による原作コミック出版(89年)、押井守によるアニメ映画化(95年)以来、世界中の熱狂的ファンを夢中にさせてきた人気シリーズが、ついにハリウッドで実写化される!

この人に聞いた

藤村 哲也(本名:哲哉)ふじむら てつや

日本の漫画・アニメ原作で、初めてハリウッドで100ミリオン(1億ドル=約110億円)以上の制作費をかけて作られた『ゴースト・イン・ザ・シェル』のエグゼクティブ・プロデューサー(製作総指揮)を務める。フィロソフィア株式会社 代表取締役社長。

1953年、広島県出身。1976年に赤井電気株式会社入社。1981年に同社を退職後、外資系投資商社、映像版権商社を経て、1986年に株式会社ギャガ・コミュニケーションズを設立。映画のビデオ版権商社としてスタートしたのち、1992年より映画配給事業に本格参入、その後、同社を独立系大手洋画配給会社に育てる。2001年、同社を株式公開、2004年株式会社USENグループ入りに伴い、取締役に就任。2006年のUSENによる完全子会社化を機に、取締役を退任し、フィロソフィア株式会社を設立と同時に代表取締役社長に就任。日本作品のハリウッドでの実写映画化やリメイク支援と、コンサルティング業務を行う。



◼︎『ゴースト・イン・ザ・シェル』に関わった経緯は?

わたし:日本でも圧倒的なファンを誇る「攻殻機動隊」がハリウッドで実写化され、いよいよ公開されます。藤村さんはエグゼグティブ・プロデューサー(製作総指揮)としてクレジットされていらっしゃいますね。 まずは、本作に関わることになった経緯を教えていただけますでしょうか?

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藤村さん:僕がやっている、フィロソフィアという会社は、日本のIP(※)を元にした、ハリウッドでの映画製作事業を行っています。

(※)IP…知的財産権Intellectual Propertyの略。著作権などが含まれることから、文中ではコンテンツを総称した意図で使用している。

この仕事では、プロジェクトのはじまり方が2つあります。1つ目は、こちらからハリウッドのスタジオやプロデューサーに「こんなにいい原作があるけど、どう?」と提案するもの。そして2つ目は、相手がやりたいものが先にあって、その権利を取ってほしいと言われるものです。

僕がメインで組んでいるアヴィ・アラッド(※)というプロデューサーは、彼は自分で映画化したい作品を言ってくるタイプです。このアヴィから「ゴースト・イン・ザ・シェル」の権利を取るのを手伝ってくれ、と言われました。彼は若い頃にトイデザイナーをしており、おもちゃ関係の仕事でよく日本に来ていたから、日本のコンテンツにも詳しかったのです。

(※)アヴィ・アラッド…米マーベルスタジオの元会長で、同スタジオやマーベルエンターテインメントのCEOやCOOを務めた。2006年にマーベルを離れ、自らの制作会社アラッド・プロダクションズを設立。現在は製作が発表されているコロンビア・ピクチャーズの『Metal Gear Solid(原題)』や、ライオンズゲートの『Naruto(原題)』など多数の日本原作の作品に携わっている。 movie image

わたし:アヴィ・アラッド氏とは藤村さんが創業されたギャガ時代からのつながりだったのでしょうか?

藤村さん:アヴィとは、ギャガのときは会ったことがある程度で、仕事上の接点はほぼありませんでした。

アヴィは当時はマーベルの会長をやっていたのですが、マーベルにいる限りは、マーベルの原作ものしか映画化できないわけです。60歳も超え、残りの人生は自由に映画を作りたいと思い、マーベルを離ることにしたのです。

では、どんな映画を作りたいかというと、若い頃に日本を訪れた影響で、日本のIPをやりたいと考えたのです。それが「ゴースト・イン・ザ・シェル」や「メタル・ギア・ソリッド」で、映画化の権利を取ってくれという話になりました。

ちなみにアヴィは、制作費が1億ドル(約110億円)以下のものにはまったく興味がありません。もともと誰でも知っているようなスケールの大きな作品にしか興味がない人なんです。

わたし:アラッド氏から頼まれて「攻殻機動隊」の権利を取るために動かれたのが、最初のきっかけなのですね。

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◼︎フィロソフィアは何をやっている会社なのか

わたし:藤村さんがフィロソフィアを設立したときの経緯についてもっと詳しく教えていただけますか?

藤村さん:ギャガ(株式会社ギャガ・コミュニケーションズ)が2005年にUSENグループ入りし、2006年に退職しました。そして、その年の12月にフィロソフィアを立ち上げました。

実は、最初はプロダクトプレイスメント(※)の会社をやろうと思ってね。でも、依田会長(※)からもっと慎重に小さい規模からスタートすることを強く勧められて。

(※)プロダクトプレイスメント…広告手法の一つ。映画内において、小道具や背景として実在する企業名・商品名を表示し、広告費を取る手法のこと表す。

(※)依田 巽氏…エイベックス元会長兼社長。2009年よりギャガ株式会社代表取締役会長兼社長CEOに就任。2008年から2013年まで東京国際映画祭(TIFF&TEFFCOM)チェアマンを務めたほか、日本経団連幹事、産業競争力強化委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会部会長などを務める。

わたし:そうだったんですね!

藤村さん:プロダクトプレイスメントの仕事は、それなりに資本が必要だし、人も何人か雇わないといけないし。でも、とにかくまずは独立して、コンサルからはじめたら?と言われて。

コンサルをやりながらも、いつか日本のIPを世界に紹介してそれを映画化したいと思っていたところで、すぐにアヴィとの出会いがありました。

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わたし:日本のIPは、アニメや漫画などを実写化するケースと、すでに映画化された邦画作品を海外でリメイクするケースの2つのパターンがあると思うのですが、藤村さんの会社では、どちらも手がけていらっしゃるのでしょうか。

藤村さん:はい。まず、アニメとか漫画を実写化することは「アダプテーション」といいます。要はリメイクではなくて、もともとある原作ものを、ハリウッドで映画化するというものです。邦画をハリウッドで再度映画化することは「リメイク」ですね。

実は僕も『ゴースト・イン・ザ・シェル』の前に、『黄泉がえり』のハリウッドリメイクをドリームワークスと契約した経緯があります。

わたし:なるほど。日本映画のリメイクではリチャード・ギアの『Shall We Dance?』や『THE JUON/呪怨』(The Grudge)などが思い浮かびますね。

藤村さん:日本版の『Shall We ダンス?』は、アメリカでも公開されて、日本の実写映画としては過去最高の興行成績を上げた作品だったんです。と言っても、10億円ぐらいですが。アメリカでもちゃんと公開されて、見出されたわけです。

僕のような誰かが間に入ったわけではなくて。あれはハーヴェイ・ワインスタイン(※)がプロデューサーで、ミラマックスの時代に作られたものですね。

(※)ハーヴェイ・ワインスタイン…米映画プロデューサー。映画会社ミラマックスの設立者として知られる。2005年より弟のボブと共にワインスタイン・カンパニーを経営。「シカゴ』や『恋におちたシェイクスピア』、『キル・ビル』などプロデュース作品多数。

藤村さん:『リング』はJホラーとして、アメリカで先にマーケットがあって、知名度もあって『ザ・リング』というタイトルでリメイクされました。2004年『呪怨』をリメイクしてプロデュースした『THE JUON/呪怨』(The Grudge)も、どちらも米国で100ミリオン(1億ドル=約110億円)以上の興行成績をあげています。もともとどちらの映画でも日本版のプロデューサーだった一瀬隆重さんが関与されていますね。

わたし:日本のコンテンツでは「ドラゴンボール」が映画化されたことも記憶に新しいですが…。

藤村さん:あれは20世紀フォックスが直接、集英社と契約して映画化されました。

日本の漫画やアニメがハリウッドで映画化されたのは、実は「攻殻機動隊」が3作目で、2008年に「マッハGoGoGo」が『スピード・レーサー』というタイトルで、2009年に「ドラゴンボール」が『DRAGONBALL EVOLUTION』というタイトルで実写化されましたが、残念ながらどちらも興行的には厳しい結果でした。

漫画・アニメのハリウッド実写作品としては、制作費が100ミリオン(1億ドル=約110億円)以上の予算で作られたのは『ゴースト・イン・ザ・シェル』が初めてのケースです。

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フィロソフィアの仕事は、一言でまとめると「日本のIPをハリウッドを中心とした海外で映画化させる」ということです。今は『ゴースト・イン・ザシェル』だけですが、来年以降に公開が期待できるいろいろな作品の企画開発が進んでいます。

いくつか日本のIPが海外で映画化され、公開された時点で、「ああ、藤村はそういうことをやっているんだ」って思ってもらえればと思っていますが、ここまで10年かかりました。これからはやっと収穫期と言える段階です。そういう意味では今までよりもより一層ワクワクして仕事をしています。

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わたし:藤村さんが、日本のコンテンツをハリウッドで映画化したいと思うようになったのは、いつぐらいからだったのでしょうか?

藤村さん:ギャガのときから、やりたいと思っており、ハリウッドで日本のIPをもとにして実写化するようなチャレンジはすでにスタートしていました。

しかし、自分が中心になって動いてもこれだけ時間がかかるので、ギャガの現場でやるのは無理があったかな、と今では思います。

わたし:ギャガの時代から日本のコンテンツを海外に、と考えていたのはなぜでしょうか?

今後そういうものがビジネス的にくると思ったのか、ハリウッドで大きい作品を作りたかったのか、それとも、日本人として日本のコンテンツを世界に送りたいという想いがあったのですか?

藤村さん:「日本のIPを世界に広めたい」という想いが先ですね。

もちろん、ビジネスをやっているわけだから、日本のIPには大きなチャンスがあるとは思っていました。日本のIPには魅力があるし、それがまだまだ採掘されていない。

そういう意味では日本は世界でも有数の原作の宝庫じゃないでしょうか。埋蔵量は世界有数で、ひょっとしたらアメリカと並んで、世界トップレベルの国ではないかと。しかし、そのわりにはまだまだ採掘されていないんです。

日本人が考え出した、この素晴らしいコンテンツを世界に広めたい。口でいうのは簡単だけど、方法論がないといけないわけです。

「攻殻機動隊」自体は、アメリカでは広く知られていたわけではないけど、こうやって映画化されることですごく認識されて、日本のコンテンツ自体のバリューがあがることが大事なことだと思っています。

そして成功した場合は、ものすごい付加価値となって、日本に還元されるわけです。1997年にマーベルが一回会社として破産していながら、再生したようにね。マーベルは、破産からわずか10何年後にディズニーに約40億ドルで買われていますよね。それはIPに映画という力で付加価値を吹き込んでできたことです。

日本のIPのコンテンツを日本だけでなく、世界にむけて映画化することで、成功すれば莫大なリターンをもたらす。それが日本のエンターテイメント業界への恩返しになる、そういった想いでやっています。

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◼︎日本で制作費がかけられないのはお金がないからではない

わたし:よく、日本の邦画は制作費が低いと言われますね。もし、攻殻機動隊が日本で実写化されたとすると、ハリウッドよりは制作費が小さくなってしまう。もし日本でもハリウッドと同じ制作費で邦画が作られたら、世界に広まることはあると思いますか?

藤村さん:日本で制作費が限られるのは、当たり前ですよね。日本人しか観ませんから。当然、制作費に100億円かけても回収できない。もちろん、それは日本だけでなく、英語圏以外の国すべてが背負っているハンディで、フランスだってドイツだって中国だって同じです。

もともとアメリカっていう国自体が多人種で、多様な文化の中で、ハリウッドというシステムそのものが育まれて、世界に通用するものを作っているという。

たとえば、中国が市場として大きくなってきたら、中国が舞台になったり、中国人キャストが増えたりする。そんな感じで、ハリウッド映画もどんどん変わってきます。それはハリウッドにはインターナショナルなものを作るっていう仕組みがあるからなんです。その仕組みを日本に持ってくるのは、急には不可能なことです。

たとえば、東宝は数百億の利益を出しているわけなので、お金がないわけではありません。ただ、日本にはインターナショナルな映画を作り広めるシステムがない。なのでハリウッドのシステムを利用して、世界にそれを出していくってことをやらないと。

インターナショナルに広める映画を作るシステムがハリウッドにしかない以上、日本のIPを世界中に広げようと思ったら、ハリウッドのシステムをうまく利用することを考えないといけません。

当然ですが、日本のIPをハリウッドで映画化したい、と思ったからといって、ハリウッドが向こうから来てくれて、どんどん買い付けてくれて、どんどん映画化してくれる、みたいな簡単なことではありません。さらに、漫画やアニメだったら、日本側の原作の先生がいらっしゃったりして、そんな簡単によくわからない相手に映画化の権利を任せたりはしないわけです。

そこにはものすごく大きな壁があるし、文化の違いがあるし、言葉の違いもあります。その両方をわかっていて、橋渡しをする誰かが必要な仕事だと思っていて、今それを自分がやっています。

それなりの年齢になってくると自分のミッション、使命ってなんだって考えるのですが、自分が何をやって世の中に貢献すべきか、自分が持っているものがなんなのか、と思ったときに、自分の役割はまさに今まで自分が培ってきた映画の世界の経験だったり、人脈だったりを活かして、海外の映像業界と、日本のエンタテイメント業界の橋渡しをすることだと思って、使命感を持ってやっています。

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わたし:その根底にあるのは、日本のコンテンツを海外に届けたいという想いでしょうか?

藤村さん:もちろん、そうです。

自分を育ててくれた日本のエンタテイメント業界に対して恩返しをしたいと思っていますし、それで日本がより豊かな社会になることに貢献できたらと思っています。

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◼︎日本のIPが世界にでれば、日本人のチャンスが広がる

わたし:今回、日本人キャストだけで作られたワケではないにせよ、海外で日本の原作がこれだけの規模で実写化されたということには大きな意義があったと感じました。

日本のIPが海外で広がることで、ハリウッド作品の舞台が日本だったり、日本人キャストがこれまで以上に出演できるチャンスがあったりと、エンタテイメント業界全体に大きな恩恵がありそうですね。

藤村さん:IPの次はタレントだと思っています。

このまま日本のIPベースのものが定着して作られていけば、日本人の俳優がもっと出演できたり、日本人の監督がハリウッドで監督できるチャンスが作れたりします。日本の才能が、世界に出て行きやすくなる。

日本には、たくさんの素晴らしいIPがあります。そういったものが多く出て来れば、そこに日本の才能が送り込める。単に日本のIPだけを広げたいと思っているわけじゃなく、日本のエンタテイメント業界にある才能をどんどんと世界に出していきたいんです。

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「なんで日本人の監督が世界で撮れないんだ」とか、「日本人の俳優が世界で活躍できないんだ」と口でいうのは簡単です。しかし、それを本当に成し遂げるには、しっかりしたロジックや方法論がないといけません。偶然をだれかが出て行ったとしても、結局、点が線になっていかないのです。まず、日本にたくさんある素晴らしいIPがハリウッドで使われるようになり、それがきっかけで日本の才能が世界にでていきやすくする、という順番です。

これらのことは、日本のエンタテイメント界だけでなく、大きな意味で日本人が認められていくということにもつながっていく仕事だと思っています。だから、モチベーションはすごく高いですし、やっていてワクワクしています。

今回も日本人が何人も出ています。注目を浴びるのは一部だけかもしれませんが、あれだけの日本人が1億ドル(約110億円)を超える制作費の映画に重要な役で出ていたことは、過去一度もないわけです。

となると、次はもっと別の形、たとえば日本人の監督とか、日本人の脚本家とかでていけるのではないかと。日本人の脚本家が先に一度書いて、ハリウッドの脚本家がリライトするとか、いろんなチャンスを作れると思う。それが今の僕の夢です。

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わたし:今回の話を聞いていると、『ゴースト・イン・ザ・シェル』は日本にとっても大きな一歩になりそうですね。

藤村さん:今までは、ヒットするハリウッド映画に、日本のお金を投資したくてもチャンスは少なかったわけです。逆にいうとお金が集まらないものにしか投資できるチャンスがなかった。

しかし、日本の一流のIPで、日本の一流の才能で、世界に通用するようなものができるような時代になったら。日本から投資できるお金も期待できるかもしれない。

だからちょっとオーバーかもしれないけれど、この『ゴースト・イン・ザ・シェル』のような作品が継続していけば、日本にとっての国益にも繋がるかもしれないと思っています。

僕自身は、日本人ということに、強くこだわっているわけじゃないんだけど、世界で日本のプレゼンスを上げていくってことは、日本人なら誰もが願っていることだし、僕もその道が作れたらいいなと思っています。

これは本当に足が長い仕事で、20年、30年かかるビジョンだけど、残念ながら自分自身の年齢もちゃんと現実的に見ていかないといけない年齢になってきているから、そういう意味では自分の志を、世代を超えて繋いでいく立場になれればいいなと思っている。全部僕ができるわけじゃなくて、その道を作ることに貢献できれば。

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◼︎本作の見どころは?

わたし:『ゴースト・イン・ザ・シェル』について詳しく教えてください。海外でも原作は有名だったのでしょうか?

藤村さん:押井守監督による1995年のアニメ映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』が、米ビルボード誌のビデオ週間売り上げで1位を獲得したので、ビデオで観ている方が多いですね。そのときはかなり話題になりました。

そのあと同じく押井守監督の『イノセンス』が2004年に米国公開され、日本のアニメーション映画としては初のカンヌ国際映画祭オフィシャル・コンペティション部門出品に選ばれました。スティーヴン・スピルバーグのドリームワークスがアメリカでも公開し、ビデオも出しているので、そういう意味でも系譜があって。

「ドラゴンボール」や「キャプテン翼」などと比べると、少しマニアックというか、ファンベースの作品ですが、クリエイターの方たちは、多分絶対に観ている作品でしょうね。『マトリックス』が「インスパイアド by GHOST IN THE SHELL」というのはみんな知っていることで、実際に「攻殻機動隊」に出てくるようなシーンがかなり入っています。

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わたし:映画をつくるにあたって、原作ものならではの苦悩はありましたか?

藤村さん:ファンベースがあるものに乗っかるってことは、メリットもあるんだけど、原作を大事にしていないというバッシングを受けるリスクもあるよね。

でも一方で、ファンの人たちだけに受けるものを作ってしまっては、百数十億円も投資したものを回収できないという苦悩がある。

商業性と作家性の両立、ちゃんと両立させることがものすごく大きなチャレンジなんだってことは、今回の実写化までの10年間を通じて僕が学んだことです。

原作があって、できあがった作品ってハリウッドにもたくさんあるけれども、どの作品も成功を収めるまでは、ものすごい量のチャレンジを、本当にたくさんの人たちが集まって行った結晶なんだってことが、映画を見た瞬間に僕が感じたことだったの。

そういう意味で、この映画を一人でも多くの人に見て欲しいし、世の中に受け入れられて欲しいし、もっというなら、当然コミックベースなので、続編も作れるようになっているので、それにふさわしいレベルでヒットして欲しい。これは選ぶのはお客さんなので、そういう映画としてみなさんに選ばれて欲しいなと思っている。

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わたし:最後に、本作の見どころを教えていただけますでしょうか?

藤村さん:やはり原作の素晴らしさだよね。原作がここまで評価されてきたのは、いまだかつてない世界観が評価されてきたわけで。だって、もし似たようなものがあったら、わざわざ海外から取りに来ないじゃない?

ネタバレになってしまうから、内容は話しにくいんだけど、80年代につくられた漫画でありながら、AIの時代を予見したような素晴らしい作品だと思います。

原作を知らない方に『ゴースト・イン・ザ・シェル』というタイトルの説明はできるのでそれだけいうと、「ゴースト」というのは幽霊ではなく、魂という意味。「シェル」っていうのは義体。義体の中に魂が宿っている。つまり脳だけが人間で、体はサイボーグ、そういう設定の映画って、過去には1本もない。とてもオリジナリティの高い原作の世界観を、ハリウッドの最新の技術を使って、一流のチームが集まって映画化した、それが本作の見どころだと思います。

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わたし:ありがとうございます。原作ファンの方でも、そうでない方でも、この映画が一人でも多くの方に観てもらえる作品となるとよいですね!

藤村さん:『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、単なるハリウッド大作映画の1本ではなくて、この作品がヒットするかどうかは、日本の漫画の業界、アニメの業界の人たちにとってはものすごく大きなことなんです。

この映画がヒットすれば、初めて日本のコミックが、世界で通用する原作になったということで、大きな流れが日本に向かって動く。ハリウッド、映画業界っていうのはそういうところだし、世界中が日本のIPに注目する、そのきっかけになる。

日本のコミックやアニメにも、もっとチャンスが広がるかもしれないし。日本の「国益」になるとまでいうのは、ちょっと大げさだし、偉そうかもしれないけれども、この作品をはじめの一歩として、あと10年かけてでも、いつか日本のIPが世界に誇れるコンテンツとなる、そういう時代を作っていけたら、幸せだなぁと思っています。

 
  • 主演:スカーレット・ヨハンソン『LUCY/ルーシー』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』、ビートたけし『座頭市』『アウトレイジ』
  • 原作:士郎正宗「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」
  • 監督:ルパート・サンダース『スノーホワイト』
  • 上映時間:107分
  • 公開日:2017年4月7日(金)全国公開
  • 公式サイト:http://ghostshell.jp
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