『東京喰種 トーキョーグール』萩原健太郎監督に聞く、絶対に諦めない夢の叶え方

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東京喰種 トーキョーグール

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人の姿をしながらも人を喰らう怪人・喰種(グール)が潜む東京。読書好きの平凡な大学生・カネキは、行きつけの喫茶店「あんていく」で、同じく読書好きの女性・リゼに出会い、想いを寄せる。その想いが、自らの運命を大きく変えるとは知らずに…。

世界累計発行部数3,000万部を超える超人気コミックが、アニメ・舞台・ゲーム化を経て、ついに実写映画化!原作者・石田スイの熱烈ラブコールを受けた主演の窪田正孝をはじめ、清水富美加、鈴木伸之、桜田ひより、蒼井優、大泉洋ら豪華俳優陣が集結。長編デビューとなる萩原健太郎監督のもとに、世界で活躍するクリエイター陣が集まり、オリジナリティ溢れる世界を作り上げた注目のバトルアクションだ!

この人に聞いた

萩原健太郎 (はぎわら けんたろう)

1980年、東京都出身。2007年にArt Center College of Design(ロサンゼルス)映画学部を卒業し、日本に帰国。THE DIRECTORES GUILDに参加し、ソフトバンク、TOYOTA、コカコーラをはじめ、多数のTV-CM、MV、ショートフィルムの演出を手がける。2013年、初長編脚本作品「Spectacled Tiger」が米サンダンス映画祭にて優秀な脚本に送られるサンダンスNHK賞を日本人で初めて受賞。2017年3月NHK BSにてプレミアムよるドラマ「嘘なんてひとつもないの」がオンエアー。『東京喰種 トーキョーグール』が長編映画初監督作となる。



◼︎映画監督を目指したきっかけは?

わたし:本作『東京喰種 トーキョーグール』が初の長編監督作となりますが、映画監督を目指された最初のきっかけを教えていただけますか?

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萩原監督:実は、映画監督になろうと思った「これだ!」っていうきっかけは曖昧です。

僕の母の兄が、映画の配給と興行会社をやっているんです。その叔父(株式会社ヒューマックスシネマ代表取締役社長・林 瑞峰氏)が映画関係の会社を経営していたので、子供のころから映画が身近にありました。

わたし:そうなんですね!

萩原監督:あと、母の姉がアメリカの方と結婚して、向こうに住んでいて、小学生の頃の夏休みに遊びに行ったときに映画館で映画をみた体験がすごく記憶に残っています。

英語はわからなかったのですが、きらびやかで、お菓子とかもかわいいし、アメリカってすごいなって。

そのときに、アメリカに対して憧れを持ったっていうのも大きいかもしれないですね。

わたし:なるほど。小さいころの海外経験は強烈に記憶に残りますよね。

萩原監督:その記憶がある中で、中学1年生のときに『ジュラシック・パーク』(93)を観てものすごく衝撃を受けました。そのときは、なぜか役者になりたいと思ったんです・笑。

でも、今考えると自分は俳優にはホント向いてないと思いますね。カメラの前に立つと頭が真っ白になってしまうんです・笑。

わたし:監督になりたいと思われたきっかけはなんだったのですか?

萩原監督:あらためて、高校を卒業したときに何がやりたいのか、自分は何が好きなのか、と考えてみたら、やはり映画を観ていたときの感覚みたいなものが、すごくいいものだったと気づいたんです。

だとしたらそれに関わる仕事がしたいと思い、映画監督になりたいなと思い始めました。

そこで、高校卒業後に、東放学園という映画の専門学校にいきました。すると「日本の映画産業は斜陽で、みんな食えていない」などと現実を突きつけられてしまった。

だったら、アメリカに行こうと思いました。ずっと憧れていたアメリカで、自分のやりたかった映画の仕事をやりたいと思ったんです。僕は、世界で監督がやりたいと思って、アメリカに行きました。





◼︎アメリカでの留学生活、そして監督に。

わたし:専門学校を卒業されて、すぐ渡米されたのですか?

萩原監督:はい。映画監督がどういうことをやるかも知らなかったんですけどね。正直器用なタイプではないので、勉強も全然できなかった。運動もできないし、自分には何ができるんだろうって悩みながらの渡米でした。

ただ、漠然と自分はモノを売る仕事じゃなくて、モノを作る仕事がしたいなって思いはあって。映画監督になれば、やりたいことが全部できるかな、ぐらいの浅い考えでした。

わたし:留学先はどのように選ばれたのですか?

萩原監督:まず映画といえばハリウッドだ!と思い、どのような大学があるか調べました。一番に出てきたのが南カリフォルニア大学(USC)だったんですが、簡単には入れないなぁと。一応願書を出しつつ、USCの語学学校に行ったんです。

わたし:何年のことですか?

萩原監督:2001年で、ちょうどテロの年でした。実は9.11が授業の初日で。すごかったですよ。ダウンタウンが訳がわからない状態でした。

わたし:それはすごい経験ですね…。

萩原監督:語学学校自体はすごくよかったです。寮がUSCの学校内にあったんですよ。だから実際のUSCの映画学部の人と知り合う機会もあったりしました。

USCって学部長が(ジョージ・)ルーカスだったりして、映画がちゃんと学問として成立しているのを身近に感じて。その語学学校は1カ月ぐらいだったんで、そこからオレンジカウンティ―にある、コミュニティカレッジに行ったんです。

わたし:2年制のコミュニティカレッジですか?

萩原監督:そうです。そこの映画学部で映画の勉強をしつつ、四年制大学には編入したいと思いながら、どこの大学を目指そうか考えていました。

そのあたりからコマーシャルにも興味を持ちつつあって、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインっていうコマーシャルフィルムのすごい有名な大学があるって聞いたんです。

マイケル・ベイ(『アルマゲドン』、『トランス・フォーマー』シリーズなど)や、ザック・スナイダー(『300 〈スリーハンドレッド〉』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』など)たちが出ている大学だと知り、おもしろそうだなぁと思い受験しました。

わたし:3年生から編入という形で入られたんですか?

萩原監督:特殊な学校で編入という形は取れなかったんです。だから入学に必要な、GPA(注:Grade Point Average。学生の成績表価値のこと)とTOEFLの点数と、ポートフォリオを充実させてから、受験して入りました。

わたし:そうなんですね。実際に入学されてみて、大学生活はどうでしたか?

萩原監督:授業がすごくおもしろかったんですよ。一クラス十数人しかいないんです。

最初はいろんなアート系の授業を受けるんです。そこから監督や撮影などコースが分かれていくんですけど。最初のクラスに台湾系の先生がいて。おじいちゃんなんですが、ビートルズのジャケットなどをデザインした人で、めちゃくちゃなんですよ。生徒の作品を燃やしたりするんです。「クソだ!」とか、お尻をだして、「お前の作品は俺のケツ以下だ!」など言ったりして。なんて学校なんだと思いました・笑。

わたし:それは強烈な先生ですね・笑。

萩原監督:そうなんですよ。僕がうまく話せなかったりすると、お前は監督なのにしゃべれないのか?と言われたりして。

わたし:学生のときから「監督」と呼ばれていたんですか?

萩原監督:日本の大学との大きな違いは、大学に入った時点で、もう学生としてではなく、監督として扱われるんです。僕は監督がやりたいと言っていたんで「監督としてその態度はどうなんだ?」って言われるんです。

例えば1分遅刻すると「そんな態度じゃクビだぞ!」と言われたりして。そういう厳しさをすごく学びました。

先生も『セックス・アンド・ザ・シティ』の監督だったり、実際の現場でやっている人たちがきて、監督としての振る舞いを教えてくれました。

もちろん学問的なことも教えてくれました。脚本をブレイクダウンするやり方とか。毎週1本英語で脚本を読んで、それに対してディスカッションをするんです。ここはこういう構造だとか。そういうディレクティングの授業もいくつかありました。

わたし:英語はどのぐらい話せたんですか?

萩原監督:全然。しゃべれないなら帰れと言われて。厳しいですけど、監督の仕事ってしゃべることですから当然ですね。

わたし:めげそうになったりすることはありませんでしたか?

萩原監督:入学してすぐ、ショートフィルムを1本とったんです。そこで、すごく良い出会いがあって。

そのショートフィルムのカメラマンが、向こうにずっと住んでいる石坂拓郎さんという日本人の方でした。のちに『るろうに剣心』の撮影監督をされた方で、来年公開予定のジョン・ウー(『男たちの挽歌』、『レッドクリフ』)の新作映画(※『追補 MANHUNT(原題)』。故・高倉健主演の映画「君よ憤怒の河を渉れ」を、福山雅治を主演に迎え再映画化するアクション超大作)も撮っている人です。

確かソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』(02)の撮影助手をしていたんじゃなかったかな。当時はまだアシスタントだったんですけど、この石坂さんのお父さんが脚本家の山田太一(TVドラマ「ふぞろいの林檎たち」、小説「異人たちとの夏」など)さんなんです。それで、僕の書いたつたない脚本をお父さんに送ってくれるんですよ・笑。

わたし:それはまたすごいですね・笑。

萩原監督:そうしたらお父さん、つまり山田太一さんから学生の僕の脚本に対して、巻物のようなFAXがくるんです。もう本当にすごいお世話になりました。

そんな石坂拓郎さんとショートフィルムを撮ったことがすべてを変えたんです。彼とショートフィルムを撮っているとき、すごく面白くて。そこで本当に監督になりたいって思ったんです。

わたし:どうしてそう思ったんだと思いますか?

萩原監督:石坂拓郎さんとショートフィルムを撮って初めて、勉強も運動もできなかった僕が「あ、これできる」って思えたんです。自分がやりたいと思ったことと、できるって思ったことが初めて一緒になった経験だったんです。





◼︎卒業、そして帰国。映画監督の夢を叶えるまで。

わたし:そのあと、どのような経緯で現在のTHE DIRECTORES GUILD(※現在、萩原監督が所属されている映像全般の演出を手がけるディレクター集団)にご参加されることになったんですか?

萩原監督:3年でアートセンター・カレッジ・オブ・デザインを卒業して。依田巽さん(※エイベックス元会長兼社長。ギャガ株式会社代表取締役会長兼社長CEO)と、藤村哲也さん(※株式会社ギャガ・コミュニケーションズ創業者、現フィロソフィア株式会社 代表取締役社長)に推薦文を書いてもらって、AFI(American Film Institute、アメリカ合衆国において「映画芸術の遺産を保護し前進させること」を目的とする機関)に行こうとしたんです。

でもそのときすでに27歳だったんで、そろそろ働かないと、と思っていたときに、THE DIRECTORES GUILDを見つけました。ここ面白いと思っていたら、来れば?と言ってもらえたんで、日本に帰ってきました。

わたし:そうだったんですね。THE DIRECTORES GUILDはCMをやられている方が多いんですよね?

萩原監督:はい。でも僕は映画がずっとやりたかったんです。CMやりながらも映画やりたい、やりたいと言っていたので「CMの事務所にきたのに、なに言っているんだ」と師匠たちに怒られたりもしました。

映画も、自分で脚本を書いたりしてオリジナルで進めていたものもあったんですけど、なかなかうまくいかなくて。

そんな中、今回の『東京喰種 トーキョーグール』の制作プロダクションのギークサイトという会社の小佐野さん(※小佐野 保氏。株式会社ギークサイト代表)と、ソフトバンクのCMなどを一緒にやらせていただいていたんですが、ずっと映画やりたいと言っていたら、今回、その流れで小佐野さんが監督に推薦してくれたんです。

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わたし:ずっと映画を撮りたいと言い続けたことで、正に夢が叶ったんですね。

萩原監督:まだ映画が公開されていないので実感はないですね。『東京喰種 トーキョーグール』は、目の前にあることをやるので必死でした。ただ、「できない」と感じたことはなかったですね。

僕は普段はどちらかというと自信はないほうです。しかし、監督になりたいと思ったことには、「なれるんじゃないか?」と思えたし、『東京喰種 トーキョーグール』も、「これはうまくいくんじゃないかな?」って思えたんです。

もしかしたら、『東京喰種 トーキョーグール』という作品が、自分がやりたいことに近かったことが大きかったのかもしれません。もともとティム・バートン(『チャーリーとチョコレート工場』、『アリス・イン・ワンダーランド』など)がすごく大好きで、ダークファンタジーをやりたいと思っていたので。

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わたし:そうなんですね。ちなみに、監督の一番好きな映画はなんですか?

萩原監督:ティム・バートンの『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』がすごく好きです。怖さと可愛さが混じっていて、怖いだけじゃなく、そこに背中合わせの感情がある作品が好きです。

僕、サーカスもすごく好きなんです。見世物小屋って怖いけど、ちょっと楽しそうじゃないですか?「怖いけど、かっこいい」とか、「怖いけど、綺麗」などそういうものをずっとやりたくて、そういう意味で、『東京喰種 トーキョーグール』は、1本目ですごく良い作品をやれたなって感じました。

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わたし:そんな『東京喰種 トーキョーグール』の、監督一押しの見どころを教えてください!

萩原監督:キャストのみなさんが、本当に魅力的だと思います。この作品は、すごくキャスティングが成功したと思っていて。なかなかリアリティが持てる作品になっているんじゃないかなと思います。

CMと一番違うのは、俳優の方たちと長い時間をかけてそのキャラクターを作り上げていけるという点でした。僕はやはり、人は人である以上、人を見ると思っています。

人は人しか見ないと思っているので、そこを描くということが大前提として一番大事だと思っています。その上で、どうストーリーを伝えていくかってことが重要なので。

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わたし:なるほど。私も一足早く『東京喰種 トーキョーグール』を拝見させていただきましたが、キャストのみなさんが本当にハマっていましたね!





◼︎これからの夢、そして映画監督を目指す方へ

わたし:このインタビューを読んでいる方の中で、これから映画監督になりたいという人たちに何かアドバイスがあればいただけますか?

萩原監督:映画監督をこれからやりたい人は、とにかくやればいいんじゃないかと思うんですよ。別に資格がいるものでもないし、今なんか簡単にiPhoneで撮れるわけじゃないですか。

数ヶ月間、専門学校の講師をしたことがあって。ときどき「監督になるにはどうしたらいいですか?」って聞かれたんですけど、正解はないし、どうしたらいいかってことをそのままやってはダメな職業ですよね。

自分の中でどうしたらそこにたどり着けるかってことを考えて、現実として方法を考えてやっていく。とにかく行動を起こすことが大事じゃないかな。そうしないと先には進めないですよね。

わたし:まさに、監督がこれまでされてきたことですね。

最後に、監督のこれからの夢を教えていただけますか?

萩原監督:この事務所入って、プロとしてちょうど10年目を迎えて、ようやく映画監督としてこんな大きな作品に関わることができたんですけど、もう1個の夢がアメリカで映画を撮ることなんです。

その夢を次の10年で叶えられたらいいなと思っています。そういった意味で次なにをやるかは自分にとってすごく大事だと思って、今はじっくりと考えているところです。

あともちろんどうなるかわからないですけど、『東京喰種 トーキョーグール』続編も作れたらなって。公開してみないとどうなるかはわからないですが。

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わたし:ありがとうございました!

 
  • 主演:窪田正孝 清水富美加 鈴木伸之 桜田ひより 蒼井優 大泉洋
  • 原作:石田スイ 「東京喰種 トーキョーグール」( 集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
  • 監督:萩原健太郎
  • 上映時間:119分
  • 公開日:2017年7月29日(土)全国公開
  • 公式サイト:http://tokyoghoul.jp/
  • ©2017「東京喰種」製作委員会 ©石田スイ/集英社

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