1950年代のブルックリンに酔いしれる!アイルランドからNYへ、愛と未来を探した一人の女性の成長物語

作品紹介

ブルックリン

1950年代のアイルランド。小さな町に住む主人公・エイリシュは、単身NYへと渡米することを決める。しかし、彼女を待ち受けていたのは、故郷とはあまりに違う都会の洗礼で…

『つぐない』で13歳にしてアカデミー助演女優賞候補となったシアーシャ・ローナンが主人公エイリシュを演じる、静かなる感動作!

ほろ苦度

78%

わたし

今日紹介するのはアカデミー賞 作品賞・主演女優賞・脚色賞にノミネートされた『ブルックリン」。先週紹介した『シング・ストリート 未来へのうた』に続いて、アイルランドからの上京モノだよー!


ミーちゃん

『シング・ストリート〜』はアイルランドの若者たちがロンドンを目指す物語だったね。今回の主人公はどこを目指すのかな?

わたし

みんな大好きNYだよ!

主人公のエイリシュは、アイルランドの小さな町で厳格な母と優秀な姉の3人で暮らしながら、食品店で働いているおとなしくて目立たない女性。故郷を離れ、単身NYに渡る決意をするんだ。


ミーちゃん

ふーん。エイリシュは誰が演じているの?


わたし

『つぐない』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナンだよー!

『つぐない』や『ラブリーボーン』など子役のイメージもあった彼女だけど、最近だと『グランド・ブダペスト・ホテル』にも出演していたよね。



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ミーちゃん

綺麗なひとだよねー!エイリシュはなんでNYに行こうと思うの?


わたし

アイルランドで暮らしている頃の彼女は、正直、どちらかというとサエないタイプで、男性にモテる美人の友人や、会計士として働く姉にコンプレックスを抱きながら暮らしているんだ。働いている食料店の店主もすごく意地悪で口うるさい女性でね。でも、当時のアイルランドにはほかに働ける場所もなくて…。

彼女は新天地で人生を再出発させることを望んでいるんだよね。


ミーちゃん

「ここではない、どこかへ」という想いは、『シング・ストリート〜』のヒロイン・ラフィーナとも似ているねー!


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わたし

うん。NYでの仕事を姉が見つけてくれて、船旅を経てNYについたエイリシュは、同郷の女性たちと寮生活を始めながら、高級デパートで働き始めるんだけど…。

彼女を待ち受けていたのは、厳しい都会の洗礼と、強烈なホームシック。デパートに訪れるマダムたちと気の利いた会話ができなくて上司から怒られたり、レストランではアイリッシュ訛りをからかわれたり、服のダサさを寮の仲間たちから指摘されたりとどんどん自信を失っていくんだ。



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わたし

そんな彼女を救ったのは、高級デパートの仕事を紹介してくれた神父が勧めてくれたブルックリン大学での会計士コースの受講と、とあるダンスパーティーで出会ったイタリア系の青年・トニー。

優しくて誠実なトニーに心を開いたエイリシュは、自分に自信を取り戻して、どんどんニューヨーカーらしくなっていくんだ!



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ミーちゃん

衣装や背景の雰囲気が可愛いね〜!


わたし

そうなんだよねー!この頃のブルックリンってこんな感じだったのかな、と思うだけでステキだよね!

そんなわけでNYを満喫して、トニーとの未来を決心しはじめたエイリシュだったんだけど、ある悲しい報せが届いて、アイルランドへと一時帰国することを決断せざるを得ない状況になってしまうの。



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ミーちゃん

そうなんだね。一時帰国ってことは戻ってくるつもりなんだよね?


わたし

うん。本人はそのつもりなんだけど、NYに戻ることを望まない人たちも居てね…。

アイルランドでの滞在が1日、また1日と伸びていく中、友人からの紹介でトニーとは正反対のアイルランドの男性・ジムと再会したエイリシュは、彼との距離がどんどん縮まっていくんだ。ブルックリンで暮らす前のエイリシュだったら、もしかしたら相手にされなかったようなジムからのアプローチに、昔は望んでも手に入らなかったアイルランドでの生活を手に入れられるという実感を得ていくんだよね。



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ミーちゃん

故郷には故郷の良いところがあるからねぇ。


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わたし

エイリシュは、果たして再びNYへと帰るのか、そして、ジムとトニーどちらの男性を選ぶのか。

『シング・ストリート〜』では描かれなかった、未来の先の物語に、エイリシュの心の成長と、大人になっていくほろ苦さを感じてね!


  • 原題:Brooklyn
  • 監督・脚本:ジョン・クローリー
  • 主演:シアーシャ・ローナン『つぐない』『グランド・ブダペスト・ホテル』、ドーナル・グリーソン『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』『エクス・マキナ』、エモリー・コーエン
  • 上映時間:112分
  • 公開日:7月1日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
  • 公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/brooklyn-movie/
  • ©2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

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あの頃の自分に思わず目頭が熱くなる。高校生たちの「ここではない、どこか」へー

作品紹介

シング・ストリート 未来へのうた

1985年、アイルランド・ダブリン。サエない14歳の少年コナーは、転校先のシング・ストリート高校でイジメにあう。そんな矢先、年上の女性・ラフィーナに一目惚れしたコナーはひょんなことからバンドを組むことになり…

『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』の監督が贈る、最新青春音楽ムービー。

胸アツ度

98%

わたし

ミーちゃん!今日紹介する映画は『シング・ストリート 未来へのうた』だよ。この映画、個人的には、早くも今年のベスト5に入りそうだよ!


ミーちゃん

わー!いつになくテンションが上がっているね!

わたし

いやー本当によかったよー!

ミーちゃんは『ONCE ダブリンの街角で』も『はじまりのうた』も観たんだよね?


ミーちゃん

うん。

ダブリン出身の映画監督、ジョン・カーニーの作品だよね。どちらも音楽がテーマだけど、曲もストーリーもすごくよかったよね!


わたし

『ONCE〜』はアメリカではわずか2館の公開から、口コミで大ヒットしたんだよね。主題歌がアカデミー賞オリジナル歌曲賞も受賞して。

続く『はじまりのうた』は、舞台もダブリンからNYに移って、キャストもキーラ・ナイトレイが出ていたりと、インディーズ臭がなくなっていたからどうかなーと思っていたけど「音楽が持つ魔法」をさらにステキに描いていて感動したよー!

そんな監督の最新作だから、これは観逃せない!と思っていたんだ。今回の主人公は、なんと高校生の男の子たちなんだよ!ここに写っているメンバー全員が、長編映画はこの作品が初めて!



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ミーちゃん

へー!初々しくていいね〜!今度はまたダブリンが舞台なのかな?


わたし

うん。1980年代、歴史的な不況に突入した頃のダブリンが舞台だよ。主人公・コナーも、金銭的な理由から学校を転校することになってしまうんだけど、そこで酷いイジメに遭うんだ。

そんな中、自称モデルの年上の女の子・ラフィーナに一目惚れしたコナーは、なんとか彼女と接点を持とうと、自分のバンドのミュージックビデオへの出演を依頼するんだ!バンドなんてやっていないのに!

でも、彼女には年上の彼氏が居てね…


ミーちゃん

わー!それは甘酸っぱい!甘酸っぱいね!


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わたし

でしょう!

とにかく、そこからのコナーはもう大忙し!音楽に詳しい引きこもりの兄・ブレンダンを先生にロックの手ほどきを受けながら、曲作りに、恋に、とひたすら前向きに進んでいくんだー!



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ミーちゃん

いいねぇ。映画の中でも、実際にバンドとして作った曲が演奏されるの?


わたし

うん!彼らが作る曲はもちろん、音楽に詳しくないわたしでも知っているような、例えばデュラン・デュランやザ・クラッシュといった1980年代のブリティッシュ・ミュージックに乗せて物語が進んでいくから、音楽好きな人はそれだけでもたまらないと思うよ〜!


ミーちゃん

ジョン・カーニー監督の音楽のセンスは、前2作で証明済みだから、安心だね!


わたし

恋や音楽以外にも必見なのが、主人公コナーと兄ブレンダンの関係性だよ。

実はジョン・カーニー監督は、『はじまりのうた』の完成前に、実のお兄さんを亡くしているんだ。映画の中で、お兄さんの名前「JIM」が出てくるシーンがあるんだけど、それを見ると映画の中で、彼のお兄さんが生きているんだな、ということが伝わってきたよ。エンドロールで「すべての兄弟たちに」と出てきたときは思わず泣いちゃった。

ミーちゃん

なるほど。場所といい、年代といい、この映画はジョン・カーニー監督にとって、自伝的な作品なんだね。


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わたし

バンドと恋の行く末は、ぜひスクリーンで確認して欲しいけど、最後にもうひとつ!この映画のテーマで欠かせないのは、ヒロイン・ラフィーナはロンドンでモデルとして活躍したがっているところなんだ。

今の自分の置かれている環境に閉塞感を感じて、ここではないどこかへ行きたいと願うことは、ずっと変わらない若者たちの葛藤なんだろうね。

ミーちゃん

ぼくは都会っ子だから分からないけど、田舎から出てきた君にはよく分かるんだろうね。


わたし

ミーちゃん!何度も言ってるけど、埼玉はそんなに田舎じゃないんだよ!


  • 原題:Sing Street
  • 監督・脚本:ジョン・カーニー『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』
  • 主演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボイントン、ジャック・レイナー
  • 上映時間:106分
  • 公開日:7月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー
  • 公式サイト:http://gaga.ne.jp/singstreet/
  • © 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved

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「みん就」を作った天才エンジニア・いとまさ氏と考える『エクス・マキナ』に見るAIの未来


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作品紹介

エクス・マキナ

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アカデミー賞視覚効果賞を受賞し、脚本賞にもノミネートされたSFスリラー。
検索エンジンのIT企業で働く主人公・ケイレブは、社内抽選に当選し、山岳地帯の奥深くにある社長・ネイサンの豪邸に1週間滞在する権利を得る。だが、そこではAI(人工知能)の研究が行われていた。ケイレブはネイサンからAIロボット・エヴァを人間として認識することができるかどうか?というチューリングテストを依頼されるが…。

この人に聞いた

伊藤将雄(いとう まさお)

株式会社ユーザーローカル代表取締役。愛称は「いとまさ」さん。1973年生まれ。千葉県出身。1997年、早稲田大学(政治経済学部)4年次在学中に、口コミ就活サイト「みんなの就職活動日記(みん就)」を立ち上げる。
卒業後、出版社に入社。編集記者を経て、当時社員数50名ほどだった楽天にエンジニアとして入社した。モバイル開発の傍ら「みん就」を会社化し楽天へ売却。その後、2年間の大学院生活を経て、Web上のユーザー行動解析ツール「ユーザーインサイト」を開発し、株式会社ユーザーローカルを設立した。



わたし:

いとまささんは「エクス・マキナ」を2回ご覧になったんですよね?


いとまさ:

そうなんです。海外では2015年に公開されていますが、知人が感想を上げているのを読んで「これは絶対見なくては」と思って海外版DVDを貸してもらいました。

2回目は日本で劇場公開されてから観ました。2回観るとよくわかるのですが、細部まで作り込まれていますね。本当に良くできた作品で、大好きです。


わたし:

主人公のケイレブは、社長であるネイサンから、AIロボット・エヴァのチューリングテストを依頼されますね。まず、このチューリングテストについて教えていただけますか?



いとまさ:

チューリングテストは、1950年代にイギリスの科学者、アラン・チューリングによって提唱された、機械が人工知能であるかどうかを判定するテストです。人間が機械と会話を行い、機械か人間か確実な区別ができなかった場合、その機械はチューリングテストに合格した、となるわけです。通常は機械と人間は隔離された部屋で、会話はディスプレイやキーボードを用いて行います。

映画の中では、エヴァはすでにその段階はクリアしていると、あえて機械であることがわかるような姿で主人公の前に現れますね。


わたし:

機械であることは初めから分かっているうえで、それでも人間だと思えるのかどうかということを試すテストでしたね。



いとまさ:

そうですね。エヴァは知性はすでに人間レベルのものを持っています。その上で、人がAIを「人間ぽい」と感じたり「人と同じもの」と認識するには、見た目や身体の動きが重要なのか。それとも中身やコミュニケーションが重要なのか。おもしろい問いかけですね。


わたし:

2014年に公開された映画『her/世界でひとつの彼女』では、声だけのAIに主人公が恋に落ちていましたね。



いとまさ:

ロボットは、ソフトよりもハードの方が人間に近づけるのが難しいんですよ。例えば、皮膚の感じだったり、手の複雑な動きだったり。この辺りは、本当に人間そっくりなロボットを作るよりも、VRとの組み合わせによって成立する可能性の方が高いと思いますね。



わたし:

VR…専用ゴーグルをかけて見るアレですか?



いとまさ:

そうです。日本では、初音ミクのものが多いのですが…。ゴーグルをかけると彼女が目の前に出てきて、目があうと、目をそらしたりしてくるんです。これは結構恥ずかしいですよ!


わたし:

そうなんですね!映画の中では、すでにエヴァはロボットであることが分かっているわけで、見た目も最初は機械の部分が多く露出していますが、だんだんと見た目も人間らしくなっていきますね。



いとまさ:

そうですね。この映画のテーマとして「人は人以外のもの(AI)を好きになれるのか?」というのがあると思います。

IT社長ネイサンの作ったAIのエヴァは顔や身体の形は女性です。ボディは機械ですが、途中から洋服を着て、機械っぽい部分を隠したりして。



わたし:

映画の中で、AIに性別をつける必要性について、ケイレブがネイサンに質問するシーンがあります。やはりAIを人と同じように好きになるには、見た目で女性である・男性であると分かることは重要なのでしょうか。



いとまさ:

どうでしょうね。性別をつけた方が、AIの設計がしやすいというのはありますよね。


わたし:

いとまささんはご自身でも、AI( チャットボット)を開発されていらっしゃいますね。AIを設計する上で、見た目ではなく、コミュニケーションにおける「男性脳」「女性脳」といった意識はされますか?



いとまさ:

いえ、まだそこまでは考えていないですね。語尾などで男性っぽい、女性っぽいというのはありますが。一般に男性は「答え」を求め、女性は「共感」を求めるなどと言いますが、今後人がAIにどちらを求めるかではないでしょうか。


わたし:

例えば道を聞いたときに、男性脳のAIは地図を表示する、女性脳のAIは目印となる建物などを声で説明する、などの違いは出てくるかもしれないですよね?

映画の中でも、エヴァが男性だったらまた違った結末になるんじゃないかと思わず考えさせられましたが…



いとまさ:

それがこの映画の上手いところですよね。AIの怖さと、女性の怖さを掛け合わせることで、観客は理解がしやすい。
エヴァが服を着るシーンが2回ありましたが、ケイレブの前で着るシーンでは、ケイレブが好みそうな服やウィッグをつけているのに、1人で着替えるシーンでは自分の好きなものを選んでいる感じがあったり。


わたし:

あれはおもしろい描写でしたね。エヴァ、最初はわざとだったんだ!と分かるのが。



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わたし:

いとまささんの開発されているAI( チャットボット)について、もう少し詳しく教えていただけますか?



いとまさ:

チャットボットは、一人以上の人間と、テキストまたは音声で会話をするコンピュータープログラムです。「人工知能」に対して「人工無能」と呼ばれていたりします。データベースとのマッチングによって、おしゃべりのコミュニケーションを楽しむことができるbotですね。


わたし:

LINEの企業アカウントなどで、特定のキーワードを送ると、返事が来るアレでしょうか?



いとまさ:

そうですね。チャットボットには、2種類の目的があると思っています。1つは実用性。検索エンジンの延長で、目的を持って使用されるものです。例えば「渋谷」と送ると「渋谷で美味しいおすすめのお店の情報」を送ってくれたりですね。そしてもう1つはいわゆる「ひまつぶし」としてのコミュニケーションです。僕がやりたいと思っているのは後者のチャットボットです。


わたし:

具体的にはどのようなものなのでしょうか?



いとまさ:

有名なところではマイクロソフトが作成した女子高生AIのLINE公式アカウント「りんな」があります。女子高生の人格を持ったチャットボットとLINEでやりとりができます。質問に対して、最適な結果を返すわけではないので、何が達成されたらゴールなのか設定できないのがチャットボットの難しくも、おもしろいところです。


わたし:

チャットボットが完成した先には、どのような使い途があると考えていらっしゃいますか?



いとまさ:

僕自身もまだ、チャットボット自体が「セカンドライフ」のように1年ぐらい流行って廃れていくものなのか、「マインクラフト」のようにずっと流行っていくものなのかはわかっていないんです。ただ、会話を飽きられない・楽しめるものができれば、企業などのエンゲージメントを高めてくれるものになる可能性はあるでしょうね。


わたし:

なるほど。ファン形成のために使用したい企業は多そうですね。



いとまさ:

現在、アメリカや中国ではチャットボットが流行っていて、ある説によるとユーザーの4割はチャットボットを口説くそうです・笑。

先ほどチャットボットは何をゴールにするかを設定するのが難しい、と言いましたが、もしかしたら「好きになってもらうこと」をゴールにするのが正しいのかもしれません。


わたし:

その辺りは『エクス・マキナ』とも非常に近いお話ですね。エヴァの目的は知性を活かして人の役に立つことではなく、人(ケイレブ)から好きになってもらうことでしたから。

ちなみに、世界的なAI事情は、現在どのような感じなのでしょうか?



いとまさ:

現在は第3次AIブームと言われていまして。ディープ・ラーニング(深層学習)によって、AIがより複雑なものを認識できるようになったんですね。


わたし:

以前のAIとは、どのように変わったのですか?



いとまさ:

以前は、例えば「これは犬の写真で、これは猫の写真だよ」と教えられながら犬と猫を判別していたAIが、犬と猫の写真を何万枚と見ることによって、教えられなくても、犬と猫をざっくりと認識できるようになったんです。人間の顔を、シワの本数から判断するのではなく、ざっくり何歳ぐらいと判断したりということができるようになりました。

今年、特に大きなできごとだったのが、Googleが作成した囲碁のAI・AlphaGoが人間に勝ったことです。


わたし:

そのニュースは見ました!



いとまさ:

画期的だったのは、ここにこう置かれたら、こう置くという勝利パターンをAIがただ記憶しているというのではなく、大体こう置いて、こんな感じになったら勝てるだろうということをAIが学習して、直感的に囲碁を打っているという点です。人間が先生となり、機械に教えていた機械学習から、機械が自ら学ぼうとする深層学習に変わっているのです。

囲碁のような複雑なゲームでは、機械が人間に勝つのは何年も先のことになるだろうと思われていました。ですが、このAlphaGoのこのニュースで人びとは「あれ、思ったより早くAIが来るのではないか?」と感じ始めたんです。これまでSFの世界で言われていたフランケンシュタイン・コンプレックス(※)がいよいよ現実のものになってくるのではないか、という実感です。

※フランケンシュタイン・コンプレックス…映画で有名な「フランケンシュタイン」が元となった概念。人間が神(創造主)に成り代わって、被造物(ロボットなど)を創造することへの憧れと、その被造物によって人間が滅ぼされるのではないかという恐れが入り混じった感情のこと。ロボットに対する人間の潜在的な恐怖を表す。


わたし:

そうなんですね。深層学習におけるAIの性能は「どれだけのデータを読み込んだか」という量が決め手となるのでしょうか?



いとまさ:

データの量だけでなく、データの質、そしてアルゴリズムが重要ですね。


わたし:

映画の中でIT社長のネイサンが、これまでずっと検索エンジンをやってきたのはそのデータを元にAIを作るためだったと言っていますが…。



いとまさ:

Googleなどの検索エンジンは、そのデータをAIの元にするとは公言していませんし、AlphaGoもGoogleが買収した会社のもので、社内から出たものではないのですが…今AIに一番近い場所にいる企業であることは間違いないでしょうね。


わたし:

現在、海外ではどんなAIが創られようとしているんですか?



いとまさ:

どこからがAIか?というのが難しい点ですが、映画に出てくるような人の形をしたロボットのAIはまだまだこれからでしょうね。

先日Amazonが「Echo(エコー)」という人工知能スピーカーを出しましたが、これは見た目的にはただの円柱状の筒です。ほかにもiPhoneのSiriには見た目はありませんし、SoftbankのPepperもあえて機械っぽい見た目になっていますよね。


わたし:

チャットボットのように、会話を楽しめるようなものは、まだ人の形に近づけようという動きはないんですね。でも近い将来、エヴァのようなロボットが出てくるかもしれません。そう遠くはないであろう未来に思いを馳せるという意味でも『エクス・マキナ』はとてもおもしろい作品ですよね。



いとまさ:

「人は人以外のもの(AI)を好きになれるのか?」という以外に「AI(エヴァ)が外に出たがるのはなぜか?」というのもこの映画のおもしろいテーマだと思います。「メアリーの部屋」という言葉をご存知ですか?


わたし:

いえ、初めて聞きました。



いとまさ:

「メアリーの部屋」は1982年に哲学者のフランク・ジャクソンによって提唱された思考実験です。白黒の部屋で生まれ育ったメアリーという女性がいます。白黒の本を読み、白黒のテレビを見て、さまざまなことを学んでいますが、生まれてこのかた「色」を見たことは一度もないという設定です。


わたし:

ふむふむ…



いとまさ:

しかし彼女は視覚について世界一レベルの専門知識を持っています。眼球や網膜に仕組みや、光の特性、どういう時に人は「赤い」や「青い」という言葉を使うかなど、視覚に関するすべての物理的事実を知っているという前提です。

そんな彼女が、初めて白黒の部屋から解放されたとします。生まれて初めて色を見たメアリーは何か新しいことを学ぶと思いますか?


わたし:

え…どうでしょうか?わかりませんが、新しく感じることはあるような気がします!



いとまさ:

この実験で、メアリーが外に出て何か新しいことを知るとしたら、それは「物理的な事実ではない」と定義されるんです。

実は映画の途中で、エヴァが外に出ているような回想的なシーンが挟まれるんですが、覚えていますか?



わたし:

はい。確か家の周りを散歩しているようなシーンでしたよね?



いとまさ:

そのシーンが白黒だったんですよ。これは「メアリーの部屋」の引用じゃないかと思いますね。本当に良くできた作品ですよ!



わたし:

なんと…それはまったく気が付きませんでした!このお話を聞くと、エヴァが外に出たがった理由もなんだかわかる気がしますね。



いとまさ:

閉じ込められた部屋からでも、世界のことを知ろうと思えば、何でも知れるような知性をもったスーパーAIでも、実際に外に出て、自分の目で見て、経験することで違う何かが得られるのでしょうか。なんとも考えさせられますよね。



わたし:

本当ですね!

最後に『エクス・マキナ』をこれから観る人への一言をお願いします。



いとまさ:

AIの進化は避けては通れない道ですから、どんな方でももちろんですが、特にコンピューター業界に関わっている人にとっては必見の作品です!

すでに観た方も、2回目を観るとまた新しい発見がありますよ。


 

  • 原題:EX MACHINA
  • 主演:ドーナル・グリーソン『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』、アリシア・ヴィキャンデル『リリーのすべて』、オスカー・アイザック『スター・ウォーズ/Forceの覚醒』、ソノヤ・ミズノ
  • 監督:アレックス・ガーランド『わたしを離さないで』
  • 上映時間:108分
  • 公開日:2016年6月11日(金)
  • 公式サイト:http://www.exmachina-movie.jp
  • (c)2015 PARAMOUNT PICTURES.ALL RIGHTS RESERVED.

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